世界の長編小説に挑む!

レ・ミゼラブル(全5巻)

ヴィクトル・ユゴー 著(西永良成 訳)
平凡社ライブラリー

 舞台は、フランス大革命後、ナポレオン体制、王政復古、七月革命…と激しく揺れた19世紀前半のフランス。貧困のなか、パンを盗んだ罪で19年もの監獄生活を送った主人公のジャン・ヴァルジャンですが、出所後も過酷な運命が待ち受けます。ジャンと彼を追う警部ジャヴェールの攻防、コゼット親子との出会い、切ない恋を軸に、暗闇と光、罪と許し、憎悪と愛が織りなす物語が壮大なスケールで描かれていきます。作者のユゴーは、王党派の詩人としてデビューしますが、やがて「ロマン主義運動」の旗手となります。政治的にナポレオン三世と対立すると、19年もの亡命生活を余儀なくされました。その中で発表されたのが『レ・ミゼラブル』です。青年マリユスには、フランス社会を変えようと立ち上がるユゴーの思想が投影されたり、生きるエネルギーに満ちたガヴローシュは、ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』に描かれたピストルの少年がモデルと言われます。ミュージカルの挿入歌『民衆の歌』は最近の社会運動でも息づきました。格差社会という現代にも通ずる問題に敢然と立ち向かったユゴー。彼の人生と重なる物語にじっくりと向き合えば、本当の人間愛が見えてくるはずです。

(大岩昌子)