出版会について

ご挨拶

出版会に携わって

2015年に設立された本出版会は、この4月に満5年を迎えることができました。私は設立メンバーのひとりとして、学長による「本学の知的リソースを発掘し、発信する」というメッセージのもと、試行錯誤を繰り返しながら、皆さんと前向きに運営を進めてまいりました。この5年間でなんとか30点を超す書籍を刊行できましたのは、関係各所の皆さまからいただいた、多大なお力添えのおかげだと思っております。この場を借りて、厚くお礼を申し上げます。

出版の仕事に携わる。それは本の「読み手」や「書き手」だけでなく、「作り手」「売り手」になることを意味します。この事実は、じわりじわりとではありますが、私自身に変化をもたらしました。まず、本を見る目が変わりました。これまでさほど気にとめなかった装丁やレイアウト、さらには花布の色などにも注目し、無縁だった専門用語にも多少通じるようになってきました。新しいことに触れるのは、なんであっても楽しいものです。ただ、本当に変化したのは、自分の「書き手」としての意識だと考えています。それまでは執筆者として、自分の書きたいことを書きたいように書いてきました。それが出版の仕事を通じ、「この本をいかに読者に届けるか」という視点に立つことができたのです。おかげで、自分自身と読み手とが完全に乖離していたことに気づかされました。これは、出版の仕事に携わったことの副次的効果といえるのでしょうか。

ここで本出版会の現在のレパートリーを紹介しておきます。まず、4種類のシリーズものがあります。一般読者を想定した「Artes Mundi叢書」、新書版「名古屋外大新書」、ブックレット版「NUFS WORKS」、そして「NUFS英語教育シリーズ」です。なかでも、名古屋外大新書『世界教養72のレシピ』(2018年)とArtes Mundi叢書『悪魔にもらった眼鏡』(2019年)は、学内の執筆者および翻訳者を発掘し、学外へ発信できた書籍だと自負しています。シリーズもの以外としては、学内の知的リソースの結晶である「学術図書」、そして「教科書・参考書」があります。また、一年次生に毎年配布する冊子『Piazza』は、学内の先生方からいただくメッセージの集成です。

出版以外の取り組みとして、図書館と共催する「読書コメント大賞」を創設しました。現在の若者は読書をしないと言われていますが、出版会がこの流れに一石を投じることができれば嬉しく思います。デヴィッド・ユーリンが『それでも読書をやめない理由』(柏書房)に書いた、「注意散漫のネット社会のなかで、読書こそはこの社会に対する最大の抵抗なのである」という精神は、大学生にも向けられる大きなメッセージだと考えております。

6年目を迎え、今後も、学内の執筆者やその研究成果に目配りするだけなく、世界教養へとつながる人文・学際・社会学などの分野から、新しいテーマや価値を創造する書籍製作を目指し、出版会は一丸となって活動してまいります。引き続き、応援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

2020年4月1日
名古屋外国語大学出版会 編集長 大岩 昌子

名古屋外国語大学出版会の設立にあたって

媒体による「出版」が変化の波に揺すぶられている今、新たな大学出版会の船出はかならずしも視界良好とはいえないでしょう。名古屋外国語大学は、全国的にはまだ知名度が高いとはいえませんが、積極的な学園運営によって、教育に関して着実な成果を挙げているだけでなく、多彩な人材を擁して、研究面でも目に見える実績を残しつつあります。

そのような私たちの大学の持つ長所を積極的に発信して社会の発展に貢献できないか、それが今回名古屋外国語大学出版会を設立した大きな理由です。在学中に英語力を大幅に向上させるだけでなく、さらにもう⼀つの言語の習得をめざす試みのためには、新たな教科書・参考書作りが不可欠でしょうし、国際社会で貴重な実戦経験を積まれた先生方の執筆される図書は、世界に目を開く手がかりになるはずです。さらに、新たな「教養」の概念で書かれた啓蒙書、ブックレットなど、私たちは大学の知を結集して、すぐれた出版物を世に出したいと願っています。誕生したばかりの出版会の今後の活動に、どうぞご期待ください。

名古屋外国語大学出版会編集長 諫早 勇⼀

NUFS Press号の船出にあたって

University Pressは今や花盛りです。日本の出版界全体の方向性を見渡せば、むろん右下がりの状況にあることは否定すべくもありませんが、大学出版会は着実に成長しつづけているようです。東京大学、名古屋大学の二つの巨人出版会を筆頭に、個々の地方国立大学、私立大学が今や意欲的に出版事業に取り組んでいます。かつて東京大学出版会から出た『知の技法』が、一大ベストセラーとなったことは、今もって大学出版会の歴史における奇跡の一つとして語り継がれています。しかし、初めから大きな成功を期待しているわけではありませんし、大それた野心を抱いているわけでもありません。ただし、それなりに夢はあり、その夢の実現に向かって一歩一歩着実な歩みを続けてほしいと念じています。そしてその夢を語る前に大切なのが、やはりサステナビリティ(持続可能性)という視点です。どこまで着実にこの事業を推進し、持続していけるか。といっても、サステナビリティの視点ばかり考え、目先の売れ行きばかりを考えるようになっては、大学出版会の本来の役目を果たすことはできません。出版会の存在は、大学のもてる知的リソースを世に知らしめるよい機会ですから、時には思い切った冒険を試みていただけると幸いです。今回、出版会の設立を決断し、"NUFS Next"にそれを書き込んだ背景には、何より名古屋外国語大学の知的なリソースを発掘したいという願いがありました。本学はいまや中部地区を代表する国際系大学として熱い注目を浴びていますが、研究発信力という側面ではまだまだ立ち遅れている観があります。力がない、というではなくて、発信の場がないというのが実感です。本出版会の設立によって、本学が外国語教育のみならず教養教育さらには研究面においても着実に歩み続けている大学であることをアピールしていきたいと念じております。編集長に就任された付属図書館長の諫早勇一先生のリーダーシップのもと、本出版会が大いなる可能性の海に向けて無事、船出できること心から願ってやみません。

2015年4月1日
名古屋外国語大学長 亀山 郁夫