出版会について

編集部便り

2023年 年の瀬を迎えて

 毎年、10月から大学図書館と共催する「読書コメント大賞」。今年も、10名の受賞者の表彰式を終えると、すでに年の瀬を迎えていました。

 敬愛する詩人の長田弘さんは、『読書からはじまる』(筑摩書房)の中で、<「ほんの文化」というものをささえてきたのは、ここにいないひとに手わたすことができるようにするということです。>と書いています。「読書コメント大賞」は<読んで、書いて、つながろう>を合言葉に、これまで多数の学生が参加し、その率直で、瑞々しいコメントによって、ゆるく、長くつながってきました。受賞した作品で取り上げられた本は、学生たちをさらに次の読書体験へといざなってくれるようです。

 今年は「世界の長編小説に挑む!」という新たな企画を図書館と共に立ち上げました。ここでは、年齢も専門も異なる本学の関係者23名が、世界の長編小説40篇を選定し、独自の視点から小説を紹介しています。140字小説が流行る今、いわゆる古典となったこうした長編小説が遠い存在と化すのも自然な流れでしょう。それでも若い皆さんに、人生が揺るがされるような長編小説に出会って、その底知れない魅力に気がついてほしい!そんな思いで、この企画は立ち上げられました。

 先の長田さんは、前掲書の中でこうも指摘しています。<図書館が、一人一人にとっては、すべて読むことなど初めから不可能な条件のうえになりたってつくられるように、「本の文化」を深くしてきたものは、読まない本をどれだけもっているかということです。>まさにこうした視点を大切にしながら、今後も皆さんとともに、読書と本の森を彷徨い続けたいと思います。

 2024年もどうぞよろしくお願いいたします。

                       2023年12月22日

名古屋外国語大学出版会 大岩昌子

教員のひろば Books and Messages ⑥

ここでは、名古屋外国語大学の知的リソースの発信の場として、本学教員が小会以外で上梓した書籍を順次ご紹介していきます。

 本学世界教養学部世界教養学科石田聖子准教授と岡部源蔵氏の共訳書、エンニオ・モリコーネ、アレッサンドロ・デ・ローザ著『あの音を求めて モリコーネ、音楽・映画・人生を語る』(フィルムアート社)が、記念すべき第1回音楽本大賞個人賞(小室敬幸氏選)を受賞しました。

あの音を求めて

石田聖子先生の受賞コメント:
 映画音楽で知られるマエストロ・モリコーネの音楽は誰もがどこかできっと耳にしたことがあるはずです。映画のなかではもちろん、映画を離れた場でも、モリコーネの音楽は聴く人の心にすっと入り込み、魂を撫でてくれるような魅力に満ちています。"映画音楽"という20世紀ならではの芸術を生み出したこのイタリアの天才の言葉を日本の読者に届けることができたことをとても誇らしく感じています。終始、モリコーネが作曲した音楽を聴きながらの翻訳作業でした。モリコーネ音楽を聴きながら、モリコーネ音楽に彩られた映画を鑑賞しながら、ページをめくっていただければ幸いです。(名古屋外国語大学HPより転載) 

教員のひろば Books and Messages ⑤

ここでは、名古屋外国語大学の知的リソースの発信の場として、本学教員が小会以外で上梓した書籍を順次ご紹介していきます。


ミシェル・ウエルベック、『滅ぼす』、野崎歓・齋藤可津子・木内尭 訳、河出書房新社、
上下巻、2023年
滅ぼす 上
 予言者の異名を持つフランスの作家ミシェル・ウエルベックの最新の小説です。フランス
では2022年1月に刊行され、発売と同時にベストセラーになりました。物語は、大統領選
や連続テロといった政治的な事件を縦糸に、主人公ポールとその家族のドラマを横糸にし
て進みます。一つの小説の中に二つか三つの小説の題材が詰め込まれているような印象で
すが、ウエルベックはそれを見事に一つの物語にまとめ上げています。ウエルベック最大
の長編であり、日本語訳では上下巻合わせて600ページを超えますが、ページターナーと
呼ばれているように、読み出したら止まらなくなる小説です。私も最初フランス語で読ん
だとき、夢中になってページをめくったことを覚えています。翻訳にあたっては、原文が
持つスピード感を損なわないことを、何よりも心掛けました。日本語訳の読者も夢中にな
ってこの小説を読んでくれることを願っています。
                  名古屋外国語大学フランス語学科 木内尭(寄稿)

教員のひろば Books and Messages ④

ここでは、名古屋外国語大学の知的リソースの発信の場として、本学教員が小会以外で上梓した書籍を順次ご紹介していきます。

ドストエフスキー『未成年』第3巻(光文社古典新訳文庫)亀山郁夫訳

 『未成年』はロシアの文豪ドストエフスキーの「五大長編」のうちの1作品です。亀山氏が17年前から取り組んできた5作品すべての翻訳が完結しました。新聞記事として掲載されましたので、ご覧ください。(出版会編集部)

教員のひろば Books and Messages ③

ここでは、名古屋外国語大学の知的リソースの発信の場として、本学教員が小会以外で上梓した書籍を順次ご紹介していきます。

田地野彰(監修)『ドラえもんの英語おもしろ攻略 ひみつ道具で学ぶ英語のルール』小学館, 2022

ドラえもんの英語おもしろ攻略 ひみつ道具で学ぶ英語のルール

 本書は,これから英語を学ぼうとする小学生向けの英語の「学習まんが」である。英語の特性と学びのヒントを国民的漫画の一つである「ドラえもん」のストーリー展開を通して紹介したものである。参考書としてではなく,「ドラえもん」を楽しみながら(英語学習に必要な)英語の基本的特徴を学習できる一冊である。教育言語学研究の視点から,たとえば,(1)学習者は必ず文法上の間違い(誤り)をする,(2)「誤り」の中にも,コミュニケーションに支障をきたす誤り(全体的誤り)と必ずしもそうでない誤り(局所的誤り)がある,(3)コミュニケーション能力の向上をめざすなら,まずは全体的誤りを避けるべきである,(4)全体的誤りの代表例は「語順(文構造)の誤り」である,(5)固定語順言語と呼ばれる英語には「語句の順序が変わると,意味も変わる」という特性がある,など。こうした研究成果に基づきながら,英語の「文構造」を意味の観点から捉え直して考案された「意味順」(「意味のまとまりの順序」)を導入した学習本であり,小学生に限らず,中高生や英語を学び直そうとする社会人にも楽しんでもらえる一冊である。

名古屋外国語大学外国語学部教授 田地野彰(寄稿)

教員のひろば Books and Messages ②

ここでは、名古屋外国語大学の知的リソースの発信の場として、本学教員が小会以外で上梓した書籍を順次ご紹介していきます。

田地野彰(編)『明日の授業に活かす「意味順」英語指導―理論的背景と授業実践―』ひつじ書房

 本書は,固定語順言語と呼ばれる英語の特性を活かして考案された「意味順」の英語教員向けの専門書である。同書は「意味順」の1)理論的背景,2)授業実践例,3)今後の展望の3部から構成されている。第1部では,理論言語学研究からみた教育文法としての「意味順」の妥当性の検証や,英語史研究からの通時的な考察,応用言語学研究からの語彙指導への示唆などが含まれる。第2部では,中学校や高等学校,大学での「意味順」を用いた授業実践例とその教育効果が示されている。第3部では,「意味順」のさらなる展開に向けて,学習者の自律と自信,および英詩研究者からの人文学的統合への展開が論じられている。なお,「意味順」については,国内外の研究書や学術論文などでも研究成果や実践例が紹介されている。Tajino, A. (ed.) (2018). "A New Approach to English Pedagogical Grammar: The Order of Meanings" (Routledge, UK)も併せて参照いただければ幸いである。

名古屋外国語大学外国語学部教授 田地野彰(寄稿)

教員のひろば Books and Messages ➀

ここでは、名古屋外国語大学の知的リソースの発信の場として、本学教員が小会以外で上梓した書籍を順次ご紹介していきます。

第1弾は、本学国際日本語教育インスティテュートの村上かおり准教授が翻訳された作品です。

『私たちは幸運だった~あるユダヤ人家族の離散と再会の物語~』(著者ジョージア・ハンター、訳者墨かおり)

水声社 3500円+税  

私たちは幸運だった―あるユダヤ人家族の離散と再会の物語

 著者ジョージア・ハンターは家族のルーツを調べるうちに、自分たちがユダヤ系米国人であり、その出自がポーランドだと知った。デビュー作となった本作は自らの家族を知る旅でもあった。

 第二次大戦前のきな臭い1939年3月初旬、ハンターの祖父、アディ・クルツが住むパリから物語は始まる。クルツ家の父母と5人きょうだいに次々と焦点をあて、大戦後の47年4月まで衝撃のドラマが展開していく。当時のポーランドには約300万人のユダヤ人がおり、90%がナチスによるホロコーストの犠牲に。首都ワルシャワの90キロ南の町ラドムでも約3万人のユダヤ人のうち大量虐殺を生き延びたのは3百人以下。1%の「幸運な人々」に入ったクルツ家だが、それは残酷で数奇な運命に翻弄される。

 クルツ家の次男アディを縦糸に、クルツ夫妻、その子どもたちと配偶者たちを横糸に史実を交えながら彼らの行動を時系列で丹念に追っていく構成。一家はラドムを起点にシベリアや中央アジア、イタリア、スペイン、モロッコや南米ブラジルと、まさに地球規模で離散し奇跡のような再会を果たす。

 祖父アディは渡米後、エディ・コーツと名前を変え、著名な作曲家として名を遺す。ハンターがクルツ家のルーツをたどるのは祖父の死後。10年がかりで書き上げた労作である。現在、英語、フランス語、ポーランド語、ポルトガル語など16の言語に翻訳され、邦訳の本書は17番目。訳者の墨かおりは名古屋外国語大学国際日本語教育インスティテュートの村上かおり准教授。ロシアによるウクライナ侵攻が1年を過ぎた今だからこそ、外大生にぜひ出会ってほしい一冊だ。

2023年3月24日

名古屋外国語大学特任教授(学園広報参与)小島一彦(寄稿)

8年間の夢と挑戦 出版会の軌跡を振り返って 

 「愛知=フィロソフィア」の故郷、名古屋の大学出版に招かれて、8年が経ちました。設立当初からの、あっという間の長い長い歳月でした。素早くゆったりとした、じつに愉しい時間でもありました。お世話になった方々に、まずこの場を借りて、心から御礼申し上げます。

『世界が終わる夢を見る(亀山先生)』『サミットがわかれば世界が読める(高瀬先生)』の編集で最初のスタートを切りましたが、私は長いあいだ商業出版社におりましたので、大学出版・専門性の高い学術系の書籍を作ることができるのだろうかと、まず考え込んだものです。執筆者の先生方は、ご自身の研究テーマを、真正面から全力を込めてぶつけていらっしゃいます。その内容を適切に読み取り、しかもわかりやすい形で読者に伝える。私をお招きいただいた理由は、そこにあるのだと思っていました。

 たとえば『アボリジニであること』という企画が寄せられたとき、私はオーストラリアの原住民や言語の実態を何も知らず、研究書や著者の浜島先生の論文などを手掛かりに模索せざるを得ませんでした。何度も先生にお尋ねし、必要な図版や地図なども配置、びっくりするような写真も掲載することができました。結果として、当出版会の企画ものとしては異例のロングセラーが誕生することになったのです。

 『まちづくり心理学』も同様です。共生やボランティア系に興味はあったにせよ、地域行政、社会心理学、都市デザインなどについてはほとんど知りません。この本は城月先生の編著で、他の大学の先生方も加わっています。4人の著者全員との最初の打ち合わせが、マトリックス図などを黒板に縦横に書き巡らせた、本当に勉強になる刷り合わせだったことも印象的です。何度も推敲や校正を重ねての仕上がりがすばらしく、おかげさまで「日本地域学会著作賞」をいただくことができました。

 出版会の使命の一つは、当大学の先生方の、横断的な連携を醸成することにもあるのではないかと考えていました。ともすれば研究者として孤立しがちなお立場で、しかしお互いの学問領域を知らずにすませるのは、あまりにもったいない。この大学には、さまざまな分野の、ユニークな優れた研究者がいらっしゃるのです。『世界教養72のレシピ』や『悪魔にもらった眼鏡』『囚われて』などのアンソロジー出版が増えたのも、こうした理由からです。外国文学翻訳書の刊行は、まさしくこの大学の得意中の得意でした。その世界で名だたる先生方や、熱意あふれる若手の研究者たちが、数えきれないほどいらっしゃるからです。こうした横断的な書籍編集のアンソロジー体験が、やがて「異次元の」展開を示すようになっていきます。

 さらにギアが入り始めたのは、『世界は映画でできている』あたりからです。インド映画、ポーランド映画まで広範囲に及んだこの評論集は、映画が現代世界を映し出す鏡であることを如実に示してくれています。この時点で、編著者ならびに大岩編集長を始めとする編集委員の論理と感性は、ひたすら冴えわたっていきました。

やはり他の大学の先生方も多数加わった『牧畜を人文学する』も、意表をつくタイトルと、専門性の高いフィールドワークに基づいた、他にはない画期的な書物です。そしてどうしてもあげておきたいのが、『アフターハイスクール』。この大学、および中京圏の多国籍文化や言語、音楽など、ファッションからグルメまで、ありとあらゆるテーマが、手作りの「味噌おでん」のようにごった煮され集大成され、しかも熱気と希望にみちた華やかで奥深い冊子となりました。わわれれ担当者が東山動植物公園に何度も取材を重ねたことも、いい経験でした。当大学の宣伝にも役立ったのではないかと、ひそかに自負しています。なおこの本は、ある先生の「高校生の本をつくりませんか」というつぶやきから生まれたことを明記しておかなければなりません。

『食と文化の世界地図』『言語の構造』『通訳ガイドブック』『現代ヨルダンレポート』など、思い出に残る本はまだいくつもあります。最新傑作のひとつ『ネム船長の哲学航海記 ソクラテスからの質問』もそうで、著者の根無先生とのやりとりと励ましあい、活発な音楽談議など、当会の本づくりの歴史に深く刻まれる記念碑になっています。

 8年間、私がここまでやってこられたのは、繰り返しますが、著者の方々の熱く地道なご努力、編集委員の先生方と編集長の敏腕によるものだと感謝しています。また印刷所の営業、組み版制作などの方々の熱意にも感謝感激です。

おしまいに、私の最後の担当となった、大好きなアンソロジー詩集のタイトルをあげ、サヨナラの言葉とさせていただきます。

『愛、もしくは別れの夜に』......再見!

2023年3月20日

名古屋外国語大学出版会 編集主任 川端博

新刊『愛、もしくは別れの夜に』

小会はこの3月で、設立から8年が経つことになります。ここまで、あらゆる側面からご支援くださった皆さまには感謝の気持ちしかありません。心からお礼を申し上げます。

 小さな出版会のわりには、アンソロジーが多く製作されてきたように思います。特に、「世界文学の小宇宙」と銘打ったシリーズ、第1巻『悪魔にもらった眼鏡』(亀山郁夫・野谷文昭編訳)と第2巻『囚われて』(沼野充義・藤井省三編訳)は世界文学の短編集で、10名以上の訳者のみなさんにご協力いただいています。この3月10日に刊行される第3巻の詩集『愛、もしくは別れの夜に』(亀山郁夫・エリス俊子編訳)では、18名もの教員のみなさんが、世界各地で時空を超えて生み出された珠玉の詩を翻訳してくださいました。この場を借りて厚くお礼を申し上げます。製作に関わってくださる方が多いことで、多様性が生まれ、多彩な価値観を共有することができます。こうしたアンソロジーの製作を通して、少しずつ出版会として成長できたように感じています。

 詩集のタイトルは大学出版会らしくないものですが、ここに収録されるロシアの詩人、ツヴェターエワやブロツキーの詩の一節から命名されました。画家の水谷誠孝氏とデザイナーの冨安由紀子氏による深遠なカバーが、この詩集の世界観を存分に表現してくれています。ぜひ、約1000年にわたる世界の詩を身近において、さまざまに思いを馳せていただければ幸いです。

                            2023年3月3日

                名古屋外国語大学出版会 大岩昌子

5年間を振り返って

 2015年に設立された小会は、この4月に満5年を迎えることができました。私は設立メンバーのひとりとして、学長による「本学の知的リソースを発掘し、発信する」というメッセージのもと、試行錯誤を繰り返しながら、皆さんと前向きに運営を進めてまいりました。この5年間でなんとか30点を超す書籍を刊行できましたのは、関係各所の皆さまからいただいた、多大なお力添えのおかげだと思っております。この場を借りて、厚くお礼を申し上げます。

出版の仕事に携わる

 それは本の「読み手」や「書き手」だけでなく、「作り手」「売り手」になることを意味します。この事実は、じわりじわりとではありますが、私自身に変化をもたらしました。まず、本を見る目が変わりました。これまでさほど気にとめなかった装丁やレイアウト、さらには花布の色などにも注目し、無縁だった専門用語にも多少通じるようになってきました。新しいことに触れるのは、なんであっても楽しいものです。ただ、本当に変化したのは、自分の「書き手」としての意識だと感じています。それまでは執筆者として、自分の書きたいことを書きたいように書いてきました。それが出版の仕事を通じ、「この本をいかに読者に届けるか」という視点に立つことができたのです。おかげで、自分自身と読み手とが完全に乖離していたことに気づかされました。これは、出版の仕事に携わったことの副次的効果といえるのでしょうか。

小会のレパートリー

 ここで小会の現在のレパートリーを紹介します。まず、4種類のシリーズものがあります。一般読者を想定した「Artes Mundi叢書」、新書版「名古屋外大新書」、ブックレット版「NUFS WORKS」、そして「NUFS英語教育シリーズ」です。なかでも、名古屋外大新書『世界教養72のレシピ』(2018年)とArtes Mundi叢書『悪魔にもらった眼鏡』(2019年)は、学内の執筆者および翻訳者を発掘し、学外へ発信できた書籍だと小会として自負しています。シリーズもの以外では、学内の知的リソースの結晶である「学術図書」、そして、主に言語教育を中心とした「教科書・参考書」があります。また、一年次生に毎年配布する冊子『Piazza』は、学内の先生方からいただくメッセージの集成で、近隣の書店にも置かれています。

 出版以外の取り組みとして、図書館と共催する「読書コメント大賞」が創設されました。現在の若者は読書をしないと言われていますが、出版会がこの流れに一石を投じることができれば嬉しく思います。デヴィッド・ユーリンが『それでも読書をやめない理由』(柏書房)に書いた、「注意散漫のネット社会のなかで、読書こそはこの社会に対する最大の抵抗なのである」という精神は、大学生にも向けられる大きなメッセージだと考えております。

 6年目を迎え、今後も、学内の執筆者やその研究成果に目配りするとともに、世界教養へとつながる人文・学際・社会学などの分野から、新しいテーマや価値を創造する書籍製作を志し、独自の存在感を持つべく活動してまいります。引き続き、ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

2020年4月1日
名古屋外国語大学出版会編集長 大岩 昌子

名古屋外国語大学出版会の設立にあたって

 媒体による「出版」が変化の波に揺すぶられている今、新たな大学出版会の船出はかならずしも視界良好とはいえないでしょう。名古屋外国語大学は、全国的にはまだ知名度が高いとはいえませんが、積極的な学園運営によって、教育に関して着実な成果を挙げているだけでなく、多彩な人材を擁して、研究面でも目に見える実績を残しつつあります。

 そのような私たちの大学の持つ長所を積極的に発信して社会の発展に貢献できないか、それが今回名古屋外国語大学出版会を設立した大きな理由です。在学中に英語力を大幅に向上させるだけでなく、さらにもう⼀つの言語の習得をめざす試みのためには、新たな教科書・参考書作りが不可欠でしょうし、国際社会で貴重な実戦経験を積まれた先生方の執筆される図書は、世界に目を開く手がかりになるはずです。さらに、新たな「教養」の概念で書かれた啓蒙書、ブックレットなど、私たちは大学の知を結集して、すぐれた出版物を世に出したいと願っています。誕生したばかりの出版会の今後の活動に、どうぞご期待ください。

名古屋外国語大学出版会編集長 諫早 勇⼀

NUFS Press号の船出にあたって

 University Pressは今や花盛りです。日本の出版界全体の方向性を見渡せば、むろん右下がりの状況にあることは否定すべくもありませんが、大学出版会は着実に成長しつづけているようです。東京大学、名古屋大学の二つの巨人出版会を筆頭に、個々の地方国立大学、私立大学が今や意欲的に出版事業に取り組んでいます。かつて東京大学出版会から出た『知の技法』が、一大ベストセラーとなったことは、今もって大学出版会の歴史における奇跡の一つとして語り継がれています。しかし、初めから大きな成功を期待しているわけではありませんし、大それた野心を抱いているわけでもありません。ただし、それなりに夢はあり、その夢の実現に向かって一歩一歩着実な歩みを続けてほしいと念じています。そしてその夢を語る前に大切なのが、やはりサステナビリティ(持続可能性)という視点です。どこまで着実にこの事業を推進し、持続していけるか。といっても、サステナビリティの視点ばかり考え、目先の売れ行きばかりを考えるようになっては、大学出版会の本来の役目を果たすことはできません。出版会の存在は、大学のもてる知的リソースを世に知らしめるよい機会ですから、時には思い切った冒険を試みていただけると幸いです。

 今回、出版会の設立を決断し、"NUFS Next"にそれを書き込んだ背景には、何より名古屋外国語大学の知的なリソースを発掘したいという願いがありました。本学はいまや中部地区を代表する国際系大学として熱い注目を浴びていますが、研究発信力という側面ではまだまだ立ち遅れている観があります。力がない、というではなくて、発信の場がないというのが実感です。本出版会の設立によって、本学が外国語教育のみならず教養教育さらには研究面においても着実に歩み続けている大学であることをアピールしていきたいと念じております。編集長に就任された付属図書館長の諫早勇一先生のリーダーシップのもと、本出版会が大いなる可能性の海に向けて無事、船出できること心から願ってやみません。

2015年4月1日
名古屋外国語大学長 亀山 郁夫