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指輪物語(全10巻)
「その指輪を捨てなければ、この世は闇となる―」。『指輪物語』は、長年そう伝えられてきた魔力を秘める指輪をめぐり、旅の仲間が勇敢に悪の勢力と闘い続ける壮大なストーリーです。舞台ははるか昔の「中つ国」。平穏に暮らしていたホビット族の青年フロドは、叔父のビルボが隠し持っていた指輪を自分の意思に反して受け継ぐことになります。その指輪を創ったのは魔界の冥王サウロン。大昔に死んだはずのサウロンの魂は指輪とともに生き残り、呪いがフロドを狂わせます。指輪を破壊する唯一の方法は、滅びの山の亀裂に投げ込むこと。仲間の一人で賢者のガンダルフは、怯えるフロドに苦々しくもそう伝えるのでした。フロドを中心に異なる種族から9人の勇士が指輪を捨てる旅に加わります。途中、何度も指輪への誘惑に駆られますが、フロドこそが「指輪の主」と皆が認め始めると、互いの友情は揺るぎないものへと変化していきます。作者トールキンは、この愛嬌に溢れるホビットを大変愛していました。作中にある戦闘シーンは、第一次大戦で従軍した彼の記憶を反映するものです。戦争で学生時代の親友を亡くしたトールキンは、『指輪物語』の中でその友情の復興を願ったのかもしれません。
(吉見かおる)