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武器よさらば(上・下)

アーネスト・ヘミングウェイ 著(金原瑞人 訳)
光文社古典新訳文庫

 18歳の時に志願兵として第一次世界大戦のイタリア戦線で負傷兵を運搬する任務についていたアーネスト・ヘミングウェイ。イタリア戦線に従軍したアメリカの青年フレデリックとイギリス人看護婦バークリとの出会い・別れを描く『武器よさらば』は、彼自身の体験をモデルとした作品です。「戦間期」と呼ばれる1920~30年代、これ以外にもレマルクの『西部戦線異状なし』など、従軍経験のある作家による第一次世界大戦を題材とした作品が発表、商業化されたばかりのトーキーとして映画化され、大きな反響を得ました。皮肉なことに、書き手と読み手の双方が何らかの形で戦争を経験していたからこそ、こうした作品は人々の心を打ったのでした。残念ながら、今日においても戦争がフィクションとなる世界は訪れていません。だからこそ、戦争体験を題材とした新たな「傑作」を生みださないためにはどうすればよいのか、こうした作品を読むことで考えるべきなのではないでしょうか。

(小堀慎悟)