世界の長編小説に挑む!

百年の孤独

ガブリエル・ガルシア=マルケス 著(鼓直 訳)
新潮社

 20世紀後半に起きたラテンアメリカ文学ブームの中心作家によるノーベル賞受賞作。ブエンディーア一族が建設したユートピア的共同体マコンド(生地がモデル)が、100年後に暴風に吹き飛ばされるまでの歴史が語られます。超能力者やシーツと共に昇天する絶世の美女、32回の反乱に失敗する大佐、空飛ぶ絨毯に乗るジプシーなどをめぐる幻想的なエピソードが魔術的リアリズムの語り口で日常的現実として披露されています。米国人によって鉄道が敷設され、バナナプランテーションが作られて、マコンドは村から町へと発展しますが、労働者のストライキが弾圧されるころから衰退が始まり、大母ウルスラの死が近づくと天変地異が生じ、一族の末裔の近親相姦によって豚の尻尾を持つ子供が生まれると、マコンドは予言どおり消滅。そのすべてをジプシーは羊皮紙にすでに書き記していました。一寒村の歴史を神話的に誇張して語る生命力に満ちたこの小説の寓意性は、世界の周縁にある国々や地域に当てはまり、被支配者の目で見た現実が通俗的言葉をまじえて生き生きと表現され、20世紀を代表する作品として、世界中で読まれ続けています。

(野谷文昭)