世界の長編小説に挑む!

ハックルベリー・フィンの冒険

マーク・トウェイン 著(柴田元幸 訳)
研究社

 蒸気船マークトウェイン号を知っていますか? ディズニーランドのアトラクションにありますよね。この名前のもとになっているマーク・トウェインはアメリカを代表する国民的作家です。日本では『トムソーヤの冒険』が広く知られていますが、『ハックルベリー・フィンの冒けん』を評価する声も多いようです。この作品にはアメリカ的な要素がふんだんに込められています。広大なアメリカの真ん中を流れるミシシッピ川が舞台になっていること、子どもが主人公であること、自由や移動を重んじること、人種や奴隷制度の問題に関わっていること、アメリカの大衆的なユーモアや訛りと俗語がたっぷりと使われていること、など。物語の登場人物の設定や非標準的な英語表現は出版当時の文壇ではあまり歓迎されなかったそうです。トウェインはそれを逆手にとり、その「あまりにも卑猥、猥雑」な作品が販売禁止になったことを自ら宣伝して人々の好奇心を募らせ、結果として多くの売り上げを得ることに成功したようです。『赤毛のアン』の翻訳者村岡花子さんによる翻訳も優れていますが、近年アメリカ文学者の柴田元幸さんが手がけた翻訳は、このハックの言葉づかいを生き生きと表現しています。

(室淳子)