世界の長編小説に挑む!

デイヴィッド・コパフィールド(全5巻)

チャールズ・ディケンズ 著(石塚裕子訳)
岩波文庫

 イギリスを代表する小説家、チャールズ・ディケンズの自伝的小説。ディケンズが最も愛した小説と言われています。物語は、主人公デイヴィッドの幼少期から、大人になって小説家として成功するまでの成長が描かれる教養小説となっています。デイヴィッドが出会うさまざまな作中人物――悪人も善人もいて、それぞれが個性的に描かれている――は魅力にあふれ、小説世界を華やかに彩っています。主人公の成長を追っているとはいえ、物語は起伏に富み、プロットが少し強引である感は否めませんが、それだけ面白味が加わっていると言えるのではないでしょうか。いろいろと脱線もありますが、それもまたディケンズの魅力です。長い小説ではありますが、笑いあり、涙あり、至福の読書経験が得られるのは間違いありません。小説に求めるものは人それぞれだと思いますが、『デイヴィッド・コパフィールド』には本を読んで得られる楽しみが満載で、物語を読むのは大きな娯楽でもあると実感させてくれる読み物です。

(甲斐清高)