世界の長編小説に挑む!

西遊記(全10巻)

中野美代子 訳
岩波文庫

 明代中期、十六世紀後半に成立した白話小説(口語で書かれた小説)。唐・太宗時代の高僧玄奘三蔵の「西天取経」の旅が伝説化し、語りものや演劇などの過程を経て成立しました。玄奘が陸路インドに赴き、ナーランダー僧院で学び仏典を中国に持ち帰ったことは、高校の世界史でも学習したことでしょう。作者は一般に呉承恩とされることが多いのですが、訳者(中野美代子氏)は、「決定的な証拠は見つかっていない」とし作者名そのものを省きました。訳者の見識と言えると思います。『西遊記』は「四大奇書」の一つに数えられる、中国古典を代表する小説です。特に孫悟空は有名で、京劇やテレビドラマ、アニメなどを通して多くの中国人に親しまれています。日本においても歌舞伎や映画、テレビドラマ、漫画、あるいは子供向けの絵本などでお馴染みでしょう。原文は全百回から成る大長篇で、翻訳も文庫本十冊の長さに及びますが、いったん面白さのツボにはまればあっという間に読み終えることができると思います。是非、この文句なしに面白い中国古典の名作に触れてほしいと思います。

(船越達志)