世界の長編小説に挑む!

紅楼夢(全12巻)

曹雪芹 著(伊藤漱平 訳)
平凡社ライブラリー

 十八世紀中葉・清代乾隆年間の小説。全百二十回からなる大長篇で、訳本も全十二冊に及びます。テーマは多岐にわたりますが、ごく大雑把に言えば、貴公子賈宝玉と二大ヒロイン林黛玉・薛宝釵をめぐる恋愛模様、及び名門賈家の栄華と没落を主な骨子とします。様々なタイプを描き分けた女性描写にも定評があります。書名の「紅楼」とは朱塗りの美しい屋敷を指す語で、豪華絢爛な貴族生活を暗示します。そしてそれを「夢」とするのが『紅楼夢』です。栄華の儚さを示しています。作者は曹雪芹(一七一五?-一七六三?)。曹家は、代々南京の江寧織造を勤める名家で、雪芹の祖父曹寅は康熙帝の寵臣でした。しかし雍正帝が即位すると、公金費消の罪に問われ曹家は没落しました。この曹家が、『紅楼夢』の舞台・賈家のモデルであることは疑いないとされています。本作はしばしば我が国の『源氏物語』に比されます。両作品を読み比べてみるのも一興でしょう。『紅楼夢』は中国が世界に誇る名著であり、一度は触れてみたい作品です。前八十回のみが曹雪芹の筆によるもので、後四十回は別人による続作とされます。したがって、まずは八十回(第八巻)までの読破を目指しましょう。そこまでいけば、続作である後半の四冊も一気に読破できると思います。

(船越達志)