世界の長編小説に挑む!
ガリバー旅行記
何度繰り返し読んでも新たな発見をするのが、この『ガリバー旅行記』です。絵本や児童文学、そして映画から、小人たちに捕らわれるガリバーの姿が象徴する第一話は広く知られていますが、この作品は16年7カ月に渡る冒険記で、各話ごとに訪れる国での異文化体験が綴られています。この作品が書かれたのは今から約300年前の18世紀です。当時の社会を鋭く風刺し、人間を嘲笑することで知られている作品ですが、国家間の覇権争いや、異国への侵攻が厳しく批判されたり、効率や便利さを科学の力で追求する偏りが露呈されたりと、その辛辣な風刺は、現代を生きる我々にも痛烈に突き刺さります。また、学習の手間を省き、誰もがあらゆる分野の文章を作成することができる装置の紹介など、現代に通じる内容は風刺だけではありません。愉快な冒険ファンタジーとして、読者の想像力を掻き立てるこの物語の側面もお勧めする大切な理由です。読書をとおして物語の世界を旅するうちに、きっとみなさんの人間や社会への見方に影響を及ぼす作品となるでしょう。
(吉本美佳)