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日本経済新聞【半歩遅れの読書術】亀山郁夫 2020年7月4日~7月25日に掲載されました

日本経済新聞【半歩遅れの読書術】亀山郁夫
2020年7月4日~7月25日に掲載されました。

内容:
①隔離された列車の乗客が見た悪夢 
旧ソ連の自己閉塞状況を暗示 (7月4日)
今年2月、横浜港沖に停泊する大型クルーズ船の映像をテレビで見ているうち、ふとある小説の一場面が頭に浮かんだ。1970年代のソ連で書かれたウラジーミル・マクシーモフの長編『検疫』(水野忠夫訳、河出書房新社)の冒頭である......

②靴底の「一匹の蝶」が変えた未来 
コロナ禍の先に思い馳せる (7月11日)
深夜、桜の咲き誇る公園をそぞろ歩きするうちにふと頭に浮かんだ小説がある。米国のSF作家レイ・ブラッドベリの短編集『太陽の黄金の林檎』(ハヤカワ文庫、小笠原豊樹訳)に収められた「サウンド・オブ・サンダー」と題する小品。戦後まもない1952年の執筆である......

③19世紀ロシアの文豪の民話 
科学万能の現代 驕りに警鐘 (7月18日)
ロシアの文豪トルストイの民話『人はなんで生きるか』(1881年)を半世紀ぶりに手にした(中村白葉訳、岩波文庫)。1881年といえば、同じロシアの文豪ドストエフスキーが急逝し、時の皇帝アレクサンドル2世が暗殺されたロシアの厄年。この後、ロシアはにわかに反動政治の波に呑(の)み込まれていく......

④ロシア語訳された加賀乙彦作品 亀山郁夫
生命と芸術の不滅性に強い信念 (7月25日)
わが国を代表する作家の一人加賀乙彦の大作『永遠の都』(新潮文庫)のロシア語訳が、今年3月にロシアで刊行された。全3巻、日本文学の翻訳史に残る事件である。それを記念する朗読会が、同じ3月に東京で予定されていたが、今回のウィルス禍でやむなく中止となった。そして今、第2波の到来が予感されるなか、オンラインによる上演を企画中である......